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ロックダウンでも消費は増加、バングラデシュ
2020年08月15日
新型コロナウイルスによるパンデミックが起こり、私たちの生活もすっかり変わってしまいました。最近では、Withコロナ、アフターコロナなどの言葉が至る所で聞かれ、徐々にその生活に慣れようとしているところだと思います。
バングラデシュにおいては、経済停滞が心配されるところですが、政府の発表ではバングラデシュの消費支出はパンデミック下でも、増加しているとのことなので、実際に現地で感じることも含め考えてみたいと思います。
バングラデシュの現在の状況
バングラデシュ経済は、ここ近年、順調な発展を遂げてきていますが今年に入り、新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で、停滞を余儀なくされてしましました。
3月20日ころから5月末までは、政府機関を中心に大規模なロックダウンが行われました。現在では、完全に解除されたわけではありませんが、日常の生活(喧騒)が戻りつつある状況です。
結論
- 昨年度(2019年7月〜2020年6月)の消費支出は、増加しているが、今年度は停滞も懸念される。
- バングラデシュの経済成長は、遅れは生じるがこれからも発展していく。
- バングラデシュへの支援は続いており、インフラ整備など近代化は進んでいる。
消費に新型コロナウイルスの影響はない!?
バングラデシュ統計局(BBS)が発表した20年会計年度(2019年7月〜2020年6月)によると、消費支出は、9.56%の増加と前年の増加率9.77%をやや下回ったものの3月半ばから5月までのロックダウンを考えれば、順調であった、新型コロナウイルスの影響は、ほぼ無かったと言えます。
年間の消費支出額を見てみても、20年会計年度では、20.86兆タカ(27.6兆円)と19年会計年度の19.06兆タカ(25.2兆円)を上回っていて、数字上では新型コロナウイルスのパンデミックによるロックダウンの影響は少なかったようです。
物価指数においても、20年会計年度は、273.26ポイントと前年の258.65ポイントを上回っており、着実に伸びています。
現地に居た感じでは、ロックダウン中は、生活必需品以外の店舗は閉じていて、人々もほぼ外出していなかったので、消費活動は止まっていたと思います。ネット通販もありますが、まだまだ浸透仕切っていない感はあります。
しかしながら、ロックダウンの解除後は、地方から人々が徐々にダッカに戻って来ており、衣料品の商店が多く集まっているニューマーケットと言われる場所では、ほぼ賑わいが戻って来ていました。
また、今回の新型コロナウイルスの影響で、バングラデシュにおいてもソーシャルディスタンスの認識が高まっていて(そんなことを忘れてしまい、密の状態がしばしば起こりますが)バイクや自転車が多く売れたことも、消費が維持できた要因になっています。
今年度以降の経済は?
21年会計年度(2020年7月〜2021年6月)のバングラデシュの経済を考えると、ポジティブな要因、ネガティブな要因とそれぞれあるかと思います。
ポジティブな要因としては、バングラデシュへの海外投資家からの投資が期待できることです。中国を発端とした今回の新型コロナウイルスの世界的パンデミックは、サプライチェーンの中国一辺倒を考え直す契機となりました。
各国の企業が中国にある工場などを、他国へ移転させることを考えており、今後は移転が進むと思われます。日本政府も中国からの移転を後押ししており、民間企業もバングラデシュや他の国に工場移転をするものと思われます。
その移転先として考えられるのが、縫製品の輸出では中国に次いで世界第2位のバングラデシュです。バングラデシュは、人口が多く人件費が安いことなどコスト面での負担が軽く、既に注目はされていましたが、今後更にその魅力に注目が集まるものと考えられます。
バングラデシュ政府の対策と日本の支援
バングラデシュ政府の対策
- 3月31日、輸出産業向けに500億タカ(約629億円)の景気刺激策を発表。労働者への給与支援と工場オーナーへ金利2%での資金援助を行った。
- 4月5日、6,775億タカ(約8,534億円)の追加刺激策として4つのプラン、公共支出の増加、刺激策の策定、社会的セーフティーネットの拡充、通貨供給の増加を発表し即時に短期、長期で実行した。
- 4月13日、インフォーマルセクターの労働者向けに76億タカ(約95億円)の直接現金支給策を発表。医療従事者と銀行家が新型コロナウイルスに感染した場合、50万〜100万タカの健康保険の適用、死亡の場合は250万〜500万タカの現金支給され、総額75億タカ(約94億円)が割り当てられ、更に、特別謝礼金10億タカが銀行家、医療従事者に割り当てられた。
- その他、銀行融資の金利優遇や税制面での対策
世界機関の支援
- 世界銀行は1億ドル(約106億円)の資金調達を承認
- アジア開発銀行が、6億ドル(約639億円)の融資実行
- IMF(国際通貨基金)は、7億3200万ドル(約780億円)を緊急援助
日本からの支援
- 国際機関を通じて、1,300万ドル(約14.4億円)を緊急支援
- JICA を通じて、医療機関へPPE(個人防護具)の提供
- CTスキャナーやX線機械など医療機器に対する援助、1,000万ドル(約11億円)の援助
- (ODA)政府開発援助融資として、3.3億ドル(約351億円)を実施
まとめ
今回の新型コロナウイルスによるパンデミックは、バングラデシュにおいても経済的なダメージは大きく雇用の縮小や喪失による貧困層の再拡大など懸念される材料もあります。
しかし、ながら昨年までの勢いのある成長の貯金もあり政府から発表される経済指標は、マイナスはしているものの、それほど悪くはない。
バングラデシュでは、橋梁や鉄道、住宅開発など進行中のプロジェクトが多々あり、既に世界機関を始め日本、中国などからの支援の資金も入っており、途中で頓挫する訳にはいかない。
今回、緊急支援など多くの援助が行われていることを考えれば、世界はバングラデシュを見捨てておらず、引き続き魅力のある投資国として捉えていると言えます。
バングラデシュの成長軌道は、一時的に停滞しても、徐々に戻ってきて、また活気あふれるものになると思っています。
2020年8月15日現在
感染者数:276,549人 死亡者数:3,657人